結婚相談所の集客|会員1名にいくらかけられるか

結婚相談所の集客を扱う記事はたくさんありますが、そのほとんどが「SNSを使いましょう」「ホームページを整えましょう」という施策の羅列で終わっています。読んだあとに残る疑問は、たいてい同じはずです。結局、会員1人を集めるのにいくらまでかけていいのか。

この記事では、IBJが公表する成婚者の在籍期間と成婚データから会員1名あたりの売上(LTV)を計算し、そこから逆算して集客費の上限を出します。金額の目安が決まれば、どのチャネルを選ぶかは自動的に決まります。

結論:会員1名にかけられるのは4〜10万円

先に答えを出します。

問い 答え
会員1名の売上(LTV)は? 約21.4万円
集客費の上限は? 1名あたり4〜10万円(粗利の2〜5割)
月10名集めるには? CPA3万円なら月30万円の予算が必要
最初の10名は? 広告ではなく人脈から。理由は後述

この数字が分かると、判断が変わります。1クリック数百円のWeb広告で、10クリックに1件の問い合わせ、その3件に1件が入会するなら、獲得単価は数万円。上限内に収まるので広告は「使える」。逆に、単価の高いキーワードで無計画に出稿すると、あっという間に上限を超えます。

会員1名の売上を計算する

集客費の上限は、会員1名がいくら払ってくれるかで決まります。IBJが公表している成婚者データから計算できます。

成婚者の在籍日数は男性276日・女性230日(中央値)。平均すると約8.4ヶ月です。この期間の売上を積み上げます。

収入 計算 金額
月会費 1万円 × 8.4ヶ月 8.4万円
成婚料 20万円 × 成婚退会率40% 8.0万円
入会金 5.0万円
会員1名の売上(LTV) 21.4万円
連盟へ払う分 活動費750円×8.4ヶ月+新規登録料2,000円 ▲0.8万円
粗利 20.6万円

料金は複数の相談所で一般的な価格帯(月会費1万円・成婚料20万円・入会金5万円)を仮定。成婚退会率40%はIBJ全体の年間成婚20,970組(=41,940名)÷登録会員107,597名から算出。これは1年間の回転率(ある時点の会員数に対する年間成婚数の比率)であり、1人の会員が最終的に成婚に至る確率ではありません。また料金・在籍期間はIBJの公表値を代表値として使っています(会員数と成婚数を四半期ごとに開示している連盟が他にないため)。連盟費用はIBJ個人契約プランの公表値(税抜)

なお、この21.4万円は料金設定で大きく動きます。月会費8,000円・成婚料15万円で計算すると約17.7万円、月会費1.5万円・成婚料30万円なら約29.6万円。自分の料金表で計算し直してから、集客費の上限を決めてください。

粗利20.6万円のうち、どこまでを集客に回せるか。ここが判断の分かれ目です。

粗利に占める集客費 1名あたりの上限 向いている状況
2割 約4.1万円 手堅く回したい。副業で始めた段階
3割 約6.2万円 標準。専業で会員を増やす時期
5割 約10.3万円 先行投資期。資金に余裕がある場合のみ

迷ったら3割(1名あたり6万円)を上限に置いてください。それ以上かけると、会員が増えても手元にお金が残りません。逆にこの範囲なら、広告費をかけて会員を増やす判断が成立します。

誰に、何を言うか|入会理由から逆算する

予算が決まったら、次は「誰に何を伝えるか」です。ここも推測ではなくデータから決められます。IBJが成婚者に聞いた入会理由がそのまま材料になります。

入会した理由 男性 女性
出会いがなかったから 34.1% 24.4%
活動者の真剣度が高いから 25.4% 28.9%
他の婚活ツールでうまくいかなかったから 11.8% 11.0%
第三者のサポートがあったから 9.9% 10.9%
短期間で結婚したかったから 9.1% 14.3%

上位2つで男性59.5%・女性53.3%を占めます。「出会いがない」と「真剣な人と会いたい」。ここに「他の婚活ツールでうまくいかなかった」を足すと、見えてくる人物像がはっきりします。

相談所に来る人は、婚活を始めようとしているのではありません。すでに何かを試して、うまくいかなかった人です。入会後に感じたメリットの最多回答が「効率よく活動できる(交際が長引かない等)」(男性35.3%・女性35.4%)であることも、同じ方向を指しています。

だから発信の中身も決まります。「素敵な出会いを」ではなく、アプリで消耗した理由を言語化して、それがなぜ相談所では起きないのかを説明する。料金の安さや会員数の多さを訴えるより、この一点のほうが刺さります。

商圏は半分ローカル、半分オンライン

チャネルを選ぶ前に、自分の商圏がどちらに寄るかを決めます。IBJの調査では、成婚者のうち地元で婚活していた人は男性51.7%・女性56.2%。残りの男性48.3%・女性43.8%は地元を離れて活動しています。地元以外で活動した理由の過半は「進学や就職で既に地元を離れていたから」(男性63.9%・女性54.0%)でした。

つまり市場は半分に割れています。地方で開業するなら地域のつながりからの紹介が中心になり、都市部なら検索とSNSからの流入が主戦場になります。両方に同じ力を入れるのは、資金が限られている段階では非効率です。

チャネル別の費用と立ち上がり

そのうえで、各チャネルを1名あたりの獲得単価で見ます。

チャネル 費用の目安 立ち上がり 1名あたりの単価
紹介・人脈 ほぼ0円 即日 ほぼ0円
自社サイト+検索 制作10〜30万円 6〜12ヶ月 積み上がるほど下がる
SNS発信 0円+自分の時間 3〜12ヶ月 時間コストのみ
Web広告 月3〜10万円〜 即日 数万円(上限内に収まるか要検証)
婚活イベント主催 会場費数万円 即日 参加者数しだい
異業種提携 紹介料 1〜3ヶ月 紹介料の設定しだい

費用は一般的な相場観からの目安。地域・規模によって変わります

ここで押さえてほしいのは金額そのものではなく、すぐ会員が来るチャネルほどお金がかかり、お金のかからないチャネルほど時間がかかるという関係です。開業直後は資金が薄いため、多くの人が無料で時間のかかるチャネルを選びます。だから立ち上がりに12〜18ヶ月かかります。

最初の10名は広告では集まらない

ここが実務で最も重要な部分です。開業直後にWeb広告を打っても、たいてい会員は集まりません。理由は3つあります。

  • 実績がない。成婚事例も会員数も書けない状態のサイトに、20万円以上を払う決断はしにくい
  • 検証にお金がかかる。広告は「どの訴求が効くか」を試す過程で必ず無駄が出ます。会員ゼロの時期にその余裕はありません
  • 比較される。広告経由の見込み客は複数の相談所を並べて比べます。知名度で大手に勝てる材料がまだない段階です

だから最初の10名は、あなたを知っている人・あなたを信頼している人から集めることになります。前職の同僚、地域のコミュニティ、趣味のつながり、本業の顧客。「結婚相談所を始めた」と伝えて、相談に乗るところから始まります。

この10名が集まると状況が変わります。実績が書けるようになり、口コミが生まれ、サイトに載せる材料ができる。広告が機能し始めるのは、その後です。順序を逆にすると、費用だけが出ていきます。

編集部の見解

開業前にやるべき宿題は1つだけです。「最初の10名を、実在する人の顔で10人書き出す」。名前が出てこないなら、それは集客戦略の問題ではなく、開業のタイミングの問題です。加盟金を払う前にここを埋めるほうが、払ってから悩むより確実に安く済みます。

集客の予算を決めるには、連盟に毎月いくら払うかが先に分かっている必要があります。IBJなら会員1名あたり月750円、固定は18,800円。粗利が確定すれば、集客にいくらまで使えるかが自動的に決まります。

費用の全項目を無料の資料で確認する

無料。この段階で加盟を決める必要はありません
(IBJ公式サイト/登録会員数107,597名・加盟相談所4,783社)

入会後の最初の仕事はプロフィール作成

集客の話から少し先に進みますが、会員のプロフィール作成は集客の続きです。ここの質でお見合いの申込数が変わり、成婚までの期間が変わり、口コミが決まります。

IBJの成婚者はお見合い11回で成婚相手と出会っています(中央値)。逆に言えば、申込が来ないプロフィールのままだと11回に到達するまでの時間が延び、会員は「動いていない」と感じて退会します。婚活のプロフィール作成は会員本人がやるものと思われがちですが、写真の指示も文章の設計もカウンセラーの仕事です。

実務では次を押さえます。

  • 写真は最優先。スマホの自撮りではなく、婚活向けに撮り慣れたスタジオを紹介する。ここだけは費用をかける価値がある
  • 条件は絞りすぎない。年収や年齢の希望を厳しくするほど母数が減る。IBJのデータでは20代女性は男性の約2倍、50代以上は男性が女性の約2倍という偏りがあり、条件しだいで紹介できる相手が激減する
  • 文章は「相手が申し込む理由」を書く。趣味の羅列ではなく、どんな生活を一緒に送りたいかを具体的に

地域で戦い方が変わる|都市部と地方

前述のとおり商圏は地元と地元外で半々に割れますが、都市部と地方では取るべき手が違います

都市部(東京・大阪・名古屋など) 地方
会員の母数 多い。連盟データベースの密度も高い 少ない。ただし競合相談所も少ない
競合 多い。大手直営も広告を出している 少ない。地域で認知されれば独占しやすい
主なチャネル 検索・SNS・広告 紹介・地域のつながり
差別化 ターゲットを絞らないと埋もれる 地域密着そのものが差別化になる

地方で開業するなら、地域密着を前面に出すのが定石です。商工会や地域の集まり、既存の人間関係が集客の主軸になり、広告費をかけずに会員が集まることも珍しくありません。一方で母数が限られるため、連盟のデータベースで地元外の相手を紹介できる体制が要ります。

都市部は逆で、母数は多いものの競合も多く、「誰向けの相談所か」を絞らないと検索でも広告でも埋もれます。前掲の入会理由に立ち返り、対象を明確にしてください。

集客できないときに疑う3つのこと

「集客できない」と感じたとき、施策を増やす前に確認したい点が3つあります。だいたいはこのどれかです。

① 集客を止めていないか

最も多いのがこれです。会員が増えると対応に追われ、発信が止まる。数ヶ月後に会員が減り、また慌てて集客に戻る。この往復で伸び悩む相談所が少なくありません。

対策は単純で、集客の時間を先にカレンダーに入れてしまうことです。会員対応は相手の都合で発生するため、放っておいても優先されます。守るべきは集客のほうです。

② ターゲットが広すぎないか

「結婚したいすべての人」に向けた発信は、誰にも届きません。前掲の入会理由に戻ると、来るのは「他の方法で消耗した人」です。さらに年齢・性別・地域で絞ると、言うべきことが具体化します。

連盟のデータベースの年齢構成も判断材料になります。IBJの場合、20代は女性が男性の約2倍、50代以上は男性が女性の約2倍という偏りがあります。自分が集めたい層と、紹介できる相手の層が噛み合っているかを確認してください。

③ 単価が合っているか

月会費を下げれば会員は集まりやすくなりますが、LTVが下がるため集客にかけられる金額も下がります。月会費を5,000円にすると、この記事の計算ではLTVが約17.2万円まで落ち、CPA上限も比例して下がります。安くすることで、かえって集客の選択肢が狭まるという関係があります。

よくある質問

広告費は月いくらから始めるべきですか?

会員数の目標から逆算してください。月2名を目標にCPA3万円なら月6万円です。ただし前述のとおり、実績がない段階の広告は効率が悪くなります。最初の10名を人脈で集め、実績ができてから広告に移る順序をおすすめします。

ホームページは作るべきですか?

必要です。ただし優先順位は「最初の10名」より後です。紹介で来た人も必ずサイトを見て確認するため、名刺代わりの1ページは早めに用意し、集客装置としての作り込みは会員が集まってからで間に合います。連盟によっては相談所ページが用意されているので、まずはそれで足ります。

連盟は集客を手伝ってくれますか?

集客支援メニューを持つ連盟はありますが、会員を連れてきてくれるわけではありません。連盟が提供するのは会員データベース・システム・研修で、集客は加盟店の仕事です。ここを本部に期待していると、研修が終わった時点で手が止まります。

集客が苦手でも開業できますか?

集客が苦手でも、最初の10名の当てがあるなら始められます。逆に当てがないまま加盟すると、無収入の12〜18ヶ月を待つことになります。詳しくは年商と退出率を検証した記事失敗を数字で検証した記事で扱っています。

まとめ

  • 会員1名の売上(LTV)は約21.4万円。粗利は約20.6万円
  • 集客費の上限は1名あたり4〜10万円。迷ったら粗利の3割=約6万円に置く
  • 来るのは「他の方法で消耗した人」。上位2つの入会理由で男性59.5%・女性53.3%
  • 商圏は地元51.7%・地元外48.3%に割れる。どちらに寄るかでチャネルが決まる
  • 最初の10名は広告では集まらない。実績がない段階では人脈から
  • 集客が止まる最大の原因は、会員対応に追われて発信をやめること

集客の施策を増やす前に、まず自分のLTVとCPAの上限を出してください。数字が決まれば、やるべきことは自然に絞られます。

LTVは料金設定と連盟のコストで変わります。自分の場合の数字を出すには、加盟条件の実額が要ります。IBJは会員数別の費用も含めて資料で公開しています。集客の予算を組む前に確認してください。

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(IBJ公式サイト/登録会員数107,597名・加盟相談所4,783社)

この記事を書いた人

成田 風輝(なりた ふうき)

結婚相談所開業ナビ 調査責任者。上場企業のIR資料・公的統計・各連盟の公式公表値をもとに、業界の数字を検証して記事にしています。M&A仲介の手数料を比較するM&A手数料ナビも運営。

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